「正しい搾乳手順は?」という質問に対して、正確に答えることができますか。正しい手順で搾乳することは、乳房炎コントロールにおいて極めて重要なことであることは言うまでもありません。なお、このページでの説明、はあらゆるタイプのパーラー、または繋ぎ牛舎のパイプラインミルカーであっても共通して言える内容です。
搾乳する牛の順序
乳房炎の感染を防ぐため、乳牛の搾乳は以下の順番を心がけてください。
健康な牛 | ➡ | 乳房炎が疑わしい牛 | ➡ | 慢性乳房炎の牛 | ➡ | 伝染性乳房炎の牛 |
搾乳30分前~
搾乳の30分前までに乳牛が驚愕または動揺などの精神的なストレス経験すると、乳量低下に影響を与える可能性があります。乳牛には、搾乳前の時間にできるだけ落ち着いた環境を提供してあげることが重要です。
ステップ1:乳牛の観察
搾る順番に間違いがないか?治療中の牛ではないか?乳頭を怪我していないかなど、まずは観察することから搾乳は始まります。
ステップ2:ファーストタッチ
搾乳者が乳牛への搾乳作業を開始するために乳頭に触れる最初のアクションをファーストタッチと言います。ファーストタッチのアクションは牧場によって次の3通りのケースが考えられます。
- ストリッピング(前搾り捨て乳)
- タオルによる清拭
- プレディッピング(15〜30秒のコンタクトタイムが必要)
上記のいずれにしても、乳頭に触れた瞬間がファーストタッチで、乳牛の乳汁流出反応のホルモン分泌プロセスがスタートします。
ステップ3:ユニットの装着
搾乳ユニット装着は、ファーストタッチによる刺激の開始後60〜120秒以内に取り付ける必要があります。 乳牛の乳汁流出反応を効果的に発揮されるために、この時間は早くても遅くても駄目で厳守しなければいけません。
ラクトコーダによる計測で得られる泌乳グラフにはバイモダリティ現象によってこの影響が表されます。バイモダリティは搾乳時間の長さに影響します。乳頭への真空が作用する時間をできる限り短くしてあげることは、乳房炎コントロールのために重要です。
ステップ4:搾乳ユニットの調整
搾乳ユニットの装着後は、ホースの状態によるユニットの捻じれや、ミルクホースの向きを調整します。搾乳中にライナースリップが発生したら速やかに直してあげることも重要です。
ラクトコーダによる泌乳グラフでは、ライナースリップの現象を確認することができます。
ステップ5:搾乳終了判断
搾乳終了の判断は機械に頼る場合が多いかと思われます。いずれにせよ、最適なタイミングは適度な残乳が乳房内に残っている状態であることです。適切であるかどうかは、搾乳終了直後にストリップカップを利用して残乳を調べることで判定できます。搾ることができた4つの乳区の合計が200~240㏄であれば適切です。この点は過搾乳を防ぐために重要です。
ラクトコーダによる泌乳グラフでは過搾乳の有無を確認できます。終了判断を機械に頼っていない場合は、マシンストリッピングが行われているケースをよく見ます。マシンストリッピングまでは過搾乳ではないと勘違いしている酪農家も少なくないと考えます。マシンストリッピングによりある程度の乳がまだ搾られていることによる錯覚です。でも流速低下からマシンストリッピングまでの時間も過搾乳なのです。この時間はtMBG(過搾乳期1)として記録されます。
ステップ6:ユニットの離脱
ユニットの離脱は、ライナー内の真空圧が下がった状態で行われる必要があります。これは手動による離脱、または自動離脱装置の場合でも同じです。離脱時にライナーのマウスピースから勢いよく空気が入ると、他の乳区への乳房炎起因菌が飛び、乳区間での新たな感染を引き起こす恐れがあります。
ラクトコーダT-Tは真空圧の計測も可能ですが、残念ながら離脱の瞬間のミルククロー内の真空圧計測することはできません。VaDia(バディア)は離脱時のクロー内圧の状態を計測でき、真空の遮断と離脱タイミングが適正かどうかを判定するのに有効なツールです。
ステップ7:ポストディッピング
デップカップまたはスプレーでディッピングを行います。デッピングのタイミングはユニットの離脱からできるだけ早い段階で行うことが理想です。搾乳終了直後は乳頭口の括約筋が働かずまだ開いているため、乳頭口内部の殺菌効果も期待できるからです。
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